2010年9月23日木曜日

十把一絡げ

基本的に外人サンが嫌いという事はない。
“外人”という言葉もあまり好きではない。イメージ的に上手く想像出来ないから。
しかし、会話などでは度々使う。特定の国の人を個別に指し示すと、それはそれで危険な時もあるし、上手くニュアンスが伝わらない事もあるから。

『外人サン達のマナーの悪さには困ったものね…。』
このフレーズは団地などで暮らしていると度々聞く事がある。毎週火曜日と金曜日、それに月1回の危険物回収の日である。
私の知る範囲、ここの集合住宅には、ペルーとブラジルとフィリピンとタイの国籍を持つ人が住んでいる。他にもいるのかもしれないが、私の知る範囲ではそうだ。
そして、この集合住宅で言うところの『外人サン達』には、ペルーとブラジルの国籍を持つ人達だけが含まれる。

そう、フィリピンとタイの国籍を持つ人は、外人サン達の中には含まれず、『○○さんの奥さん』、もしくは『○○さんの旦那さん』と固有名詞+続柄で呼ばれている。ちゃんと個別に扱われ、ちゃんと個別に非難され、ちゃんと個別に褒め讃えられるのだ。

色々な意味で不思議であり、色々な意味で納得出来る。
ブラジルやペルーの国籍を持つ人達は、この集合住宅では個別の認識を余りされない。それが良い事であれ、悪い事であれ、『ブラジル人達』や『ペルー人達』と呼ばれるのだ。これはある意味の差別だと思う。いや、今まではそう思わなかったが、あらためて考えるとそう思った。


今日、調子が悪いのと、雨天のダブルパンチをくらい、リハビリを休んで家で寝ていた。
安普請の私の部屋からは、表の通路での会話が丸聞こえである。雨と風の音を聞きながら呆けていた。
「ニホンジン、イジワルバカリ。アイツ、キマッテイル!」
発音の悪い日本語で叫ぶ女の人がいた。
その後から、それをなだめすかすような言葉をかける日本人女性の声がした。それが昼前の事だった。

その会話の意味を知ったのは夕飯時だった。
お袋殿から聞いた話だと、
隣の棟に住んでいるブラジル人家族が管理者から注意の手紙を受け取ったらしい。

一応、公営の団地なので、居住するには親族同一世帯でなければ住む事は出来ない。居住する世帯収入で家賃が決定するからだ。
この家族、友人家族を一緒に住まわせていたらしく、4人家族が9人家族にふくれあがっていたらしい。多分、小うるさい近隣の住人が密告したのだろう。

良くある話である。そう、よくあるはなしだ。
私がここに住むようになってから7年。今までにそう言った理由で出ていった人達を何組も見た。そして、今もそう言った部屋は他にもいくつかある。
きっと密告者(通報者)は、その家族の何かが気に入らなかったのだろう。通報するなんて事は、通報する側も度胸が必要だからだ。色々な意味で。

あの昼前に聞いた、『ニホンジン、イジワルバカリ』の声が耳に残る。
あの女性も、全ての日本人が意地悪だとは思っていないだろう。でも、その意地悪だと感じた日本人の名前を知らないから『ニホンジン』と言うしかなかったのだろうと思いたい。
そうやって考えてみると、『ブラジル人はうるさい』とか、『ブラジル人は地域活動に参加しない』と言ってきた自分も反省しなければならない。
昔、家の上に住んでいたブラジル人家族は、まったく夜中に騒がなかったし、うるさいとかんじたこともなかった。それに、ヘタな日本人家族よりも積極的に地域活動に参加していた。
3年前、下の部屋に住んでいたペルー人家族も愛想が良く、子供が沢山いたのにうるさくもなければ子供の日本語教育もしっかりしていた。他のペルーの人がマナーを守らないと注意しに行ってくれたくらい。
この二家族の名前はしっかり覚えている。
いま、下に住んでいるブラジル人家族の名前も、上階に住んでいるブラジル人家族の名前も知らない…。下のブラジル人、上のブラジル人と呼んでいたなぁ…。

ニホンジンと十把一絡げにされぬよう、私も『外人サン達』と十把一絡げで考えないようにしたいと思ったわけである。

だが、明日はゴミの日。今晩から意地悪なニホンジンと、マナーのなっていないガイジンサンが一触即発のバトルをする事は確実である。
前日のゴミ出しは、この集合住宅の最大最悪の問題なのである…。

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